確か、出会ったのは1年前
桜が咲いていて、3年生にあがったとき
初めて会って
初めて喋って

初めて恋をした






ハ ロ ー ・ グ ッ バ イ





「あーあ。卒業かー。早いね」
「本当にー・・」
慈郎ちゃんも私もだらだらしていた
卒業式の練習ってかったるい
って、大学行くんだっけ」
「は?何を今更・・。行くに決まってるでしょ」
「だよねー。どこだっけ?」
「ちょっと遠いところ。女子大」
「そっかー、難しいとこだったね、そういえば」
相変わらず慈郎ちゃんはだらだらしながら話していた
ポケットから飴を出して、包みを開け、口に放り込んでいた

「跡部とはどうすんの?」

口の中で飴をなめながら慈郎ちゃんは言った

「さぁ、もう終わりかね」

窓の外に見える空はもう赤く染まっていた
グラウンドには、下級生が部活を行っていた

「結構、あっさりしてんだね。意外」

「私も結構驚いてるよ」

こうもあっさりしてるなんて。

付き合っててもどこか遠くに感じてたのは知ってる
一緒に居て楽しかったのも勘違いだったのかもしれない


「恋愛ってむずかしいね」

そう言うと、慈郎ちゃんは苦笑しながら「そうだね」と呟いた




3年生にあがって、今まで仲の良かった子と運悪くクラスが離れてがっかりしてたけど
噂の跡部景吾と一緒のクラスだって知ってちょっとウキウキしてた
しかも、席替えをしたら席が隣になっちゃって、すごく驚いた記憶がある。
最初は話すことなんかできなかったけど、2年のとき一緒のクラスだった慈郎ちゃんを通じて話すようになった
本当に夢みたいだった。

「跡部君ってさぁ、彼女居るの?」
すごく気になって聞いてみた質問は今思うと、なんてわかりやすい性格してるんだろうって思う
しかも景吾はニヤリと笑って
「それを聞いてどうする?」
って言ってきた。私も気持ちは見え見えだったに違いない。

付き合い始めたキッカケなんて特になかった気がする。
気づいたら一緒に居ることが多くなって、
気づいたら恋人関係になってた

デートは部活の休みの日に必ずしていた
「何処に行きてぇんだよ」
っていつもかったるそうに聞いてきたけど、ちゃんと行きたい場所に連れて行ってくれた。
「愛してる」なんて言葉はもらえなかったけど、愛されてる気がした。
もちろん、私は景吾を愛していた


このまま上手く続くって思ってたけど、
やっぱりもう限界みたい

離れ離れなんて嫌だよ



私は大学に進学することが決まって、景吾も当然、大学に行くと思ってた
もちろん、一緒の大学は無理だと確信していた
けれど、突然、景吾は海外に行くことになった
家の仕事の一部を景吾が行うことになって、決まったらしい
しかも、帰国は未定
最初は、待っていようって決めた
けど私にとってそれはキツいことだって思った

私が、センター試験を受ける前、景吾はよく学校を休んでいた
仕事を継ぐかなんかで忙しくなったと聞いていた

会えないことが多くなって

一緒に居ると余計に離れ離れになることを考えて、逆に苦しくなってきた





「そろそろ、桜の季節だね」
慈郎ちゃんは窓の外を見ながら呟いた
「そうだね・・・何か去年のこととか懐かしく感じるね」
「うん。も飴いる?おいしいよ」
「あ、ありがと」
受け取った飴はレモン味だった

「なんかさ、キスの味はレモン味とか言うじゃん」
「あー・・よく言うね」
「私にとって、レモン味って、恋愛の味って感じかな」
「何それ」
「なんか、甘酸っぱいの。特に片思いしてから、付き合い始めたあたりまで」
景吾と付き合っていたことを思い出すとそんな感じがする
って急に乙女っぽいこと言うよね」
「文句あんの?」
「ないけどさー・・やっぱ別れるの?」
「・・しょうがないでしょ。どうせ、連絡も取れないほどお互い忙しくなるのよ」

現実なんてそんなもんでしょ?

続いた言葉は何故か声に出せなかった。

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