あなたと出会ったのは桜の咲く季節だった



1年前の春を『 出会いの春 』って言うなら、

今年のこの春は


『 別れの春 』だね






ハ ロ ー ・ グ ッ バ イ





『卒業生、退場』
先生の声が体育館に響き渡った
席から立ち上がり、私たちは体育館を出て行く
中には泣いている子もいっぱいいて、卒業式らしい卒業式だった

涙は出なかった
卒業式では涙を出せなかった

景吾のことで頭がいっぱいだった





卒業式も終わって、皆校庭に出て行った
想い出を残す為に・・
もう、教室にはあんまり人が居なかった。

「あれ?慈郎ちゃん・・外行ったんじゃないの?」
「んー・・跡部からの伝言言いに来た」
「景吾・・から?」
ちょっと胸が痛んだ
景吾からの伝言って言葉だけで、涙が出そうになった

「屋上に来いってさ」

「うん・・ありがと」

「早く行った方がいいよ」

「ありがと」


もう景吾に会うのは最後なんだ






「遅かったじゃねぇか」
いつもと変らない顔で、いつもと変らないことを言った
「これでも、早く来たんだから」
一歩一歩足を進めて、景吾の傍に行った

「卒業なんだね、私たち」
校庭には、沢山の生徒が居て
あたりを見回すと、ちらほらとピンク色の花が見える

「このまま・・・空港に行くの?」
「あぁ、そろそろ迎えの車が来る」
「・・そっか」

お互い目を合わせないで、ずっと外を見ていた

「景吾と、一緒に居れてすごい楽しかったよ」
「・・あぁ」
「幸せだった・・すごく幸せだったの」
「あぁ」
自然と瞳から涙がこぼれた
卒業式では出なかったのに

そっけない返事に聞こえるけど、景吾の返事はいつもと違った

「だから、景吾にお礼を言いたいの・・・」


景吾とやっと目が合った


「ありがとう」


景吾は私を抱き寄せて呟いた

「・・ごめんな」

その言葉を聞いただけで、涙がぼろぼろこぼれてしまった







「じゃぁね、景吾」
「あぁ」



『別れよう』なんて言葉はいらない

もともと、『付き合おう』なんて言葉を交わしていない私たちだから




「さようなら」
「あぁ、元気でな」
「景吾もね」






桜は咲いて、また散る


そしてまた咲く




次会うときは




『 出会いの春 』だね・・・


END
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