007:だから君に恋をした








「本当に、趣味悪い」
「そこまで言わなくてもいいじゃん」
お昼のファーストフード店。
休日なだけあって、客が頻繁に出入りして、にぎわっている
俺は窓側の2人席でずびずびとジュースを飲んでいた
目の前には幼なじみの花子
幼い頃からの付き合いで、よく昔から一緒に居る。
周りから仲良しとか言われるけど、別に付き合ってるわけでもない
友達以上恋人未満っていう関係が一番当てはまると思う

「ぜってぇ、これはおかしい」
「いや、普通なんだって!これ!!」
花子は自分の携帯についているストラップを俺に差し出した
「今人気なのよ!このキャラクター!!」
「いや、キモイじゃねぇか」
「キモ可愛いってやつよ!魅力のわからない男ねっ!」
「わからなくて結構」
こいつの趣味はわからねぇ
と言うより、女の趣味って言った方がよいんだろうか





「あ、そうそう。ちょっと聞きたいんだけどさぁ」
花子は手に持っていた携帯をテーブルに置いた
「何だよ」

「亮ってさ、好きな人いんの?」

「は?何だって?」

「だから、好きな人っている?」

「な・・なんだよ突然」
「あ。動揺してるー!居るんだねー好きな人!」
目の前で花子はニヤニヤ笑っていた
「居ねぇよ!んなもん!」
「思いっきり否定するとこが怪しー!」
「お前はどうなんだよ!」
「え?あたし?」
花子は突然きょとんとした顔をした。逆に聞かれるとは思ってなかったんだろう

「そうだねぇ、今は恋愛とかあんま興味ないかも」

意外な答えが返ってきた
普通女ってやつは恋愛とかしてんじゃねぇのか?っていう疑問が浮かんだ
「あ、人の恋愛話聞いたりするのは楽しいけどね」
そういって花子はハンバーガーに噛みついた


「んでさぁ、亮の好きな人ってどういう子?」
「だから、何でんなこと聞くんだよ」
「友達に聞かれちゃってさ」
「何を」
「だーかーらー、宍戸君って好きな子居るの?って」
花子はその聞かれたところだけ可愛い子ぶって言った
「その声キモイ」
「えー結構似てると思うけどなー」
「んで、何でそいつが俺のこと聞くんだ」
「そんなの簡単じゃない。その子が亮の事好きなんだよ。それで、幼なじみの私に聞いてきたってワケ」
「それでお前はその後どうしたんだよ」
「聞かれた後?んっとね、聞いてきてあげる!って笑顔で言ったよ」
「最悪・・・」
「え?何うなだれてんのー?」



こいつは、なんて鈍感なんだ





「で、どんな子?!どんな子?!」
「お前・・その友達の為って言うより、好奇心で聞いてるだろ」
「もちろん」
「即答かよ」
「だって、今までこういう話聞いたこと無かったからさ!」
花子はにっこり笑って言った
なんでこいつはこんなにも好奇心旺盛なんだか

「教えて!あの子に教えないと友達関係やばいから、さ」
「俺のプライバシーとか考えないのかよ」
「だって、そんなの今更!」
そうだ、こいつはこういう奴だった
何を言っても無駄だ






「で、どんな子?どんな子?」
「・・馬鹿な奴だよ」
「え?馬鹿って頭悪いってこと?」
「そういうわけじゃねぇよ。明るくて能天気で意外とお人よし」
「へー。さりげなく優しい子ね!」
花子はメモ張を取り出し、ボールペンでメモしていった
「・・で?!」
「・・・一緒に居て苦にならない」
「へー!なるほどねー!」
またさらさらとメモしていた
明らかに俺が言った以上のことを書いている
何を書いてるんだか・・・

「もうこれでいいだろ」
「うん、ご協力どうもー!」
花子は右手で敬礼をして言った
「でも意外だなー」
「何がだ」
「なんか、亮って見た目にあんまこだわらないんだね」
「・・そうか?」
「だってさ、さっきから性格のことしか言わないからさー」
「人間見た目より中身とか言うじゃねぇか」
「まぁ、それもそうなんだけどね。男って見た目に弱いのかなーって思ってたから」
「それ女も同じじゃねぇか?」
一瞬きょとんとした顔をした後、花子はそうだねと笑いながら言った



「でさ、もう1個質問ね」
「・・なんだよ」
「何で好きになったの?その子のこと」
「・・そんなことも聞くのかよ」
「これは、あたしが気になるだけだからさ。他の子に言わないよ」
ニッコリ笑って花子は言った




「他の女と違ってた、ただそれだけだ」





「他の女?」
「よく居るじゃねーか。テニス部の周りに」
「・・美形目当てで寄ってくる女子?」
「あぁ、そいつらとあきらかに違ってただけだよ。だから好きになっただけだ」
「へーなるほどねー」
「もう満足だろ」
「うん」









そろそろ出ようか、と花子が言い2人で店を出た
少しだけ日が傾いてた

「亮がんばってね」
「何がだよ」
「好きな子と上手くいくように、さ」
花子はにこっと笑って言った
「そりゃどーも」

「会ってみたいなー亮の好きになった子」

こいつは本当にわかってない



「誰だかすぐにわかるといいなー」

なんでこいつはこんなにも鈍感なんだろう





「あ、私本屋寄ってくから、じゃあ」
「おう」




「がんばってね」


花子はもう一度別れ際にそう言った



花子の姿がもう遠くに行ってしまったとき、俺は呟いた




「・・・気づけよバーカ」




そういう馬鹿なところを含めて俺はあいつを好きになったんだ








だから君にをした








end






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読んでいただきありがとうございました
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如月なつき


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