暗闇の中に自分が居て
目の前に居る人に手を伸ばした

けれど、掴むことができず、

目の前に居る彼はどこかに消えて行った


追いかけようとしたら

目が覚めた



その夢は妙にリアルに感じて


どこか切なかった








ラプソディー act1









「遅刻する・・!!!」
玄関で靴に足を入れて、チャリの鍵持って玄関から飛び出た
あんな夢さえ見なきゃ普通に起きれた気がする

まだ、朝早いじゃないなんてツッコミはなし
男子テニス部マネージャーの朝は早い
レギュラーが集まる前にやっておかなきゃいけないこともあるし
なんて面倒くさいことをしてしまったんだろうと自分でもつくづく思う
けれど、ちゃんとマネージャーの仕事はやる
やると決めたことはちゃんとやる




「お、来た来た・・・」
「セーフ?」
「めっちゃアウトやけど」
にっこり笑って忍足は私に言った
「まじで?間に合ったかと思ったんだけど!!」
ふと腕時計を見ると、6分オーバー

確実に怒られる

「何で遅れたん?」
「ちょっと、不思議な夢を見てしまいまして」

本当に何の夢だったんだろう
自分は誰の手を掴もうと思ってたんだろう

「あれ?跡部は?」
「朝練来れないんやって。用事があるみたいやけど」
「めずらしいわね・・まぁ、怒られずに済んでラッキー」
「でも、会えなくて寂しいんとちゃう?」
「は?跡部と?」
こいつは何を言い出すんだ

「好きなんやろ?」
「・・・ありえない」
「だって、いっつも目で追ってるやん」
こいつって奴は!!!!
「・・・何で知ってるのよ」
「毎日一緒に居れば解ると思うんやけど」
「・・あんただけだよ・・。」
「あーそれもそうか。」
絶対岳人とか宍戸とか絶対知らないと思う
鈍感そうだもの。あの2人


「跡部も知らないだろうね」

彼は絶対気づいてない
私がいつも彼を見ていること、いつも想っていること

「それはどうやろな」
「え?」
「もしかしたら気づいてるかもしれへんで?」
「気づいてたら嫌だなー」
「何で?」
「だって、一緒に居づらいじゃん。そんなの」
「そうかもしれへんな、まぁ、頑張り?」
「ありがと」
忍足はポンと私の頭を叩くとラケットを手に持ってコートに入って行った


「おい、!早く仕事しろよ!」
宍戸がどなって言った
「あんたも練習ちゃんとしなよ!」
「んなもんわかってる」
さて、仕事しなくちゃ・・・




本当にあの夢は何を意味していたのだろう












「あれ?跡部・・どうしたの?めずらしいね、私のクラスに来るなんて」
「辞書持ってるか?次英語なんだが・・」
「あぁ、あるけど・・・忘れたの?」
「いや、向日に貸したら返ってこなかっただけのことだ」
「・・・3回目ぐらいかね」
「・・・覚えてねぇよ」
嬉しかった
景吾がいつも、辞書を借りに来ることが
他のレギュラーを頼らないで私に借りに来ることが
いつも、英語の授業がなくても辞書を持ってる自分を誉めてあげたいぐらい


「はい」
「後で返しに来る」
「わかった」
景吾は私の差し出した辞書を受け取って、自分の教室に戻って行った


小さなことでもいいの
跡部と話せただけで喜びを感じる


それだけ、私は彼を愛してる


「何ニヤニヤしてるん?」
私の隣の席に座る忍足はニヤリと笑って聞いてきた
「ニヤニヤしてた?むしろ、ニヤニヤしてるのはそっちじゃないの?」
「お互いしてたんとちゃう?」
「私はしてません」
「幸せオーラ出しとったけどな」
「うるさい」
自分が少し嬉しそうな顔をしていたのは否定できない
結構顔に出る性格だから
かと言ってそうだねなんて言いたくない

「なんか、人の恋愛見てるのおもろいわ」
「おもしろがらないでよ」
「まぁ、応援してるんやからええやん」
「はいはい。許してあげますよ」
「さんきゅ、授業もう始まるな」
忍足は鞄から教科書を探り出した






、これ」
跡部が私の席まで来て辞書を差し出した
「あ、ありがと。返しに来るの早かったね」
「いや、お前も使うかと思ったんだが・・」
「よかったのに。今日は英語ないから」
「・・・助かった、さんきゅ」
「どういたしまして」
私は跡部の手から辞書を受け取った

そのとき

少し跡部の指先に触れた



がんばって平常心を装っていたけれど

心は飛び跳ねているようだった





「じゃぁな」
「うん」
跡部はまたすぐに教室へと戻って行った

「幸せオーラ全開やなー!」
「うるさいってば」
「ま、ええんやないか?あの跡部がめずらしく礼を言ってきたんやで?」
「え?めずらしいの?あれって」
「・・・何言うとるん?」
「え?だってさ、いつもちゃんと言うよ?礼くらい」
「・・・・ホンマに?」
「ホンマですよ」
「・・・・俺らいつも言われないんやけど」
「・・・嘘」
「嘘ちゃうでー」



もし今、勘違いしてもいいと言うのなら

勘違いをさせて


嬉しい気持ちでいっぱいにさせて




お願いだから


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