『星が流れる間に3回お願い事を唱えたら、お星様がが叶えてくれるよ』

小さいころ、お母さんにそう教えてもらった日の夜。

幼い私は一生懸命夜おそくまで起きて流れ星を探したのだけど

見つからないまま夜明けを迎え もちろんそのときには小さな私はもう眠っていた


何年前だろう はっきり覚えてるのは起きたときにかけられていた毛布の感触だけ。


知りたいのは、私はその日 夢の中でみた流れ星にいったいどんな願いをかけたんだろうってこと






  きららきら光って一瞬で消える






「あー、暗くなっちまったな。」

「まあ、大会前だし、しょうがないよ。」

「でも一応お前とかマネージャーの女もいるし、暗くなる前に終らせるように真田に言っとくよ」

「え いいのに。」

「やーでも 危ないっしょ。最近物騒だしなあ」


『優しいね。』

もちろんそんなの照れちゃって言えなかったけど、凄くうれしかった。

でも、そのおかげで丸井が家まで送ってくれるなら、私はどんなに暗くなっても練習を手伝いたい。



こう思われるのは迷惑かなあ



「・・・・星きれー・・・」


こうやって時々立ち止まってみるのは、本当に星がきれいっていうのもあるけど、

君と居る時間がもっともっと長くなるように 私なりにがんばってるんだよ

丸井が計算高い女は苦手っていうのは知ってるけど、これは単なる乙女心の裏返し。 ごめんね。


「流れ星見れないかな?」

「おれ 流れ星嫌い」

「そうなの?」

「流れちゃうじゃん?それが嫌。」


なんで? 訊くと丸井は空を仰ぎながらいった。


「他の星はそこにとどまって光ってるのに、流れ星は一瞬でなくなるじゃん。なんかさみしくね?」

「あ、そういうことかあ」

「そういうとこが 俺いやー。さみしい。」

「・・・・だけど私はそんなところがすきだな。」

「ふーん?」



その身が消えることによって 自分を見てもらえる。

多すぎる星の中で 自分だけ目立てるんだよ。


自分自身を犠牲にしてまで あなたに気付いてもらいたい。

そんな気がして なんかロマンチック。


「・・・・・そういえば丸井、さっき告られてたんだって?」

「 うあ・・・ なんで知ってんの・・・。」

「仁王くんに。」

「あの野郎・・・。」

「さすがテニス部 モテるねえ」

「ふっ まあな」


たくさん 丸井のこと好きな人は たくさんいて。

私もそのたくさんのなかの一人で。

丸井を見守る たくさんの 星のなかのひとつで。


私も流れ星になれればいいな。

そしたら君の目に 一瞬でも焼き付ける事が出来るのにな。


「・・・・あ、でも丸井は流れ星嫌いなんだっけ」

「独り言はやめれ。 置いてくぞー」

「 ごめんごめん」


私は君の後姿を小走りに追いかけた。

そして丸井の数歩後ろを歩きながら 数え切れないほどの星達を眺める。


「・・・・・・・・・・・丸井ー」

「んー?」

「流れ星ないねえ」

「またかよ」

「流れ星って、自分の身を投げてまで願い事かなえてくれるんだね」

「そうなー。」


振り返らず、適当に相槌を打つ丸井は、やっぱり空を見上げたままで。


「もし見つけたら 丸井は願い事何にする?」

「ケーキ食いたい!」

「そればっかじゃん」

「食こそ全て」

「あっそー」



告白なんてきっとしないけど、でも願い事はいつもひとつ。

私を見てください。私はこんなにも丸井のこと見てるのに

世の中って理不尽だと思う。

本気でそう思う。


そう思いながら また空を見上げたとき。


「・・・・・・・・・あ!」
「・・・・・・・・・あ。」


 願いを唱えましょう
 3回唱えましょう


「え!うそ!わー!!」

「流れちゃったな〜」

「願い事言えなかった・・・」

「そんなもんだろィ。」


言ったって、願ったって、叶うわけないのは分かってるのに。

叶わなくたっていいって思ってたはずなのに。


星が流れたことを 願いを唱えられなかったことを 心の中でほんの少し悔やんでる私がいて。


「おいおい まじで悲しそうじゃん?」

「・・・ちょっとね!」

「何言おうとしたの?」

「・・・・・・秘密。」

「えー ケチー!!」


ガムを膨らましながら丸井は、そう言って私より2、3歩ほど前を歩いた。

そしてそのまま歩き始めたかと思ったら、また立ち止まり振り返った。


「じゃあ俺の願い事言うからも言って!」

「 え、」


立ち止まる丸井につられて 自然に私も歩みを止める。


「いいっしょ?」


心臓の音が 星の声が 風の囁きがうるさくて。


何も考えられない。だって君の瞳に私が映ってる。



流れ星になりたいと思った。

でも自分がそんなロマンチックに生きられるとは思えなかった。





「・・・・・・・俺は」

「どうせケーキでしょ、私の願い事の方が重すぎるよ!」

「あ?」

「やっぱり理不尽なんだね。こんなのってない!」

「黙ってろって」

「    ・・」

「俺は」



と付き合いたいデス」




一瞬でも輝やければいい 想いを伝えられるなら消えたっていいよ、なんてそんなこと 言えるはずがなかった。

欲張りな私は あなたの前で輝き続ける事ができれば とさえ思った。



 冗談でしょ・・?



震える声が言った




「俺、好きでもない女のこと毎日送ったりするほど優しくねえ。」

「・・・うそ ・・」

「で?の願い事は?」



喋ると泣きそうだったから 私は何も言えなかった。



「・・・・・言わなくてもわかるけどね。のことなんて。」


優しく笑む丸井の顔が見えた。





「俺とお前の願い事   一緒に叶えねえ?」








星達に照らされた君の笑顔は、暗がりの中でいつもより、今まで見たどの顔よりもかっこよく見えた。














<2005.09.27>
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