雲の暗い12月の最初の週。それはそれは寒い朝。



 14歳。

大好きなひとの前で


今とてつもなく 怒ってます。




「若のばーーーか!!もう二度と口聞いてやんねーかんな!!」




その声は、廊下の端から端まで響き渡ったようで、半径5メートル以内の人達は皆耳をふさいでた。

廊下にいる全員があたしを見てるのに、


若だけは何も言わずに、すたすたと教室へ入っていってしまった。







  喧嘩と好きと誕生日






本当はあんなこというつもりじゃなかったのに。


「また日吉と喧嘩したって?」

「ウス」


近づいてきたのは、若の数少ないお友達の中のお二人。


「樺地君ー!ちょたろー!あたしを助けてくれー!」


机にうっつぷしてた上半身を上げて言った。





若とあたしは付き合ってます。

大好きで大好きで死にそうなくらい、あたしは若の事想ってるのに

それを素直に伝えられなくて。

そのせいで毎日喧嘩ばっかしてる。


「またが勝手に怒ってるだけなんだろ?意地張らないで謝ってくればー?」


ちょたろーが言った。

確かに、その毎日っていうのはあたしが一方的に怒ってるだけだけど

でも、今日は。


「今日は・・・・違う」


今日のだって、若を含めたあたしの周りの人から見たら、

ただあたしが一方的に怒ってるだけってあきれるかもしれないけど




「今回のは、若が反省するべきだよ・・・・絶対。」




ちょたろーと樺地君が不思議そうな表情の顔を見合わせる。



「一体何があったんだよ?」



ちょたろーがあたしに向かって問いかけた。

あたしは下を向いて、小さなため息をついた。

気持ちの中のモヤモヤが
、小さくなったような気がして、口が動いた。



「・・・今週の日曜・・若の誕生日なんだ。」

「ああ、そういえば12月って聞いてたなー。」

「でね、パーティーしようと思って家に行ってもいいかって聞いたら」


「練習するからって断られた?」


苦笑するちょたろーが図星を指す。


「・・・・うん。」

「それで喧嘩したの?」

「でも・・・」

「でも?」

「・・・・・・・・・・・・・・・それだけじゃない。」



それだけじゃないんだ。



「・・・・・・練習の後でもいいからパーティーしよって言ったら




”んなもん祝ってどうする”って。」




苦笑するちょたろー。いつも通りの樺地君。




「日吉はそーゆー奴だよなぁ・・・」


「ウス」

「そりゃそーゆー奴だって事くらい百も承知だけどね」

「うん」

「そーゆー奴だって分かってて付き合ってるんだけど!」

「でもありえない、って?」

「そうなの!!もう信じられなくて!!」

「うん。今回はの気持ちわかるかも。」

「だよね?!」



でも・・・・・・・・・・・・・・・・・それでもこんな事言うつもりなくて。



「もぉ・・・・・・・・・どうしよぉ・・・。」


今度こそ、若に愛想つかされちゃったかな

不安で不安で不安で


「うがーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・」

「なに、後悔してんの?」

「あーー・・・・・んーーーーー」

「日本語喋ろーよ。」



若が悪い。

心の底ではそう思ってるんだけど

なんていうか

若に嫌われたくないっていう以前に

若のこと、あたしが好きすぎちゃってて



「あたしさぁ・・・・若のこと、全部好きだから。」



嫌なところも全部好きなんだよね



「なんてねー。本人の前では言えないこの性格が憎いね」



独り言になりそうだったから、顔を上げて長太郎と樺地君を見ながら笑った。

そしたら、長太郎がきょとんとした顔で



「じゃぁ、言ってみれば?本人に。」



「・・・・・・・・・・は?」



「と言う事で、御本人さーん?聞こえたー・・・よね?」



あたしの机の横で立ってたちょたろーが、後ろを向いて言った。



「・・・・お前らそーゆー話は本人のいねぇところでやれ。」



は・・・



「彼氏君が同じクラスで、&隣の席だったこと思い出した?」



ちょたろーの、可愛い楽しそうな笑みが黒く見えたのは初めてだ。



「・・・・・もしかして全部聞いて・・・・」



頭の中が真っ白になる。顔が赤くなる。

ちょたろーと樺地君のでっかい図体のせいで、隣の席の若が見えなかった。



「聞こえた。ぜんぶ。」



若の声が怒ってるように聞こえた。

慌ててちょたろーに助けを求める為に視線を送ったら

ちょたろーは微笑みながら


「あ、次の授業体育だ。樺地、着替えにいこーか」

「ウ、ウス・・・」


なんてわざとらしい会話をしながら、教室を出ていった。

無責任な奴め・・・!!!



でも体育前のせいか、どんどん教室にいる人は減っていき、

しまいにはあたしと若二人だけになってしまった。



沈黙が恐ろしい。(どどーん)



「あああああああたしも着替えてくるっ!」



ガタッ!


勢いよく立ち上がったけど


若に腕を強くつかまれた。



「口聞いてくんねぇんじゃなかったのか。」



めずらしい。

若が、なんかムキになってる。(気がする)



「・・・・・・・・・・・・・・・・話、ぜんぶ聞いてたんでしょ?」



つい口走るその言葉は、強がっちゃって。


でも若は



「・・・・いや、もう忘れた。」


「は??何それ。あんたバカ?」



恥ずかしくて若を見れない。

全部聞いてたんでしょ?

ああ もう



「忘れた。だから、最初から全部言え。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ!?」



何を言うのかこの男。




「・・・やだよ。」

「最初から言え。」




なんか

こんな若はじめてみた。





へんなの





若があたしに 何かを求めるのって



はじめてじゃん






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・要するに」







あーーちくしょ








「あたしは若のこと大好きなんだけど、でもやっぱり今回は若が悪いし、謝って欲しいんだけど、でもなんかそんなのもうどうでもいいような気もしてて!!」


「・・・・要点をまとめろ。」





偉そうな若の態度に、こっちも反逆して






「若大好き。愛してます。」








そういえば付き合い初めてから



あたしが若に好きって言うのって




初めてかも。






「・・・・・・・・・・・あのー、若?」







めずらしいものをみた



若が












照れてる














「あーーーーーーーーんたは、素直じゃないね」


「てめーに言われたくねぇ」




ガラになく、片手で顔を隠してる若





「要するに、あたしに 好きって言われたかったんでしょ。」

「・・・・ヤメロ。」








駄目だ。もうなんか色々どうでもよくなってきて。







「もーーーー、大好きだぁっ!」






抱きついた君の背中が、いつもより少し暖かかったから



何故だか私  もっともっと好きになったよ




























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