「乾のあたしに対する感情は 恋じゃないんじゃないかな」


静かに告げる

冷静な二人の冷静な恋に 冷たい風が吹いた。








この感情、この想い









気付いたら一緒に居た。

気付いたら付き合ってた。

思えば、いつからこんな風になっていたんだろう。



街を歩けば、カップルが幸せそうに手を繋ぎ、キスをして、笑いあっている。

俺達にそんなときがあったか?


・・・いや ない、な。


それ以前に俺たちは、それらの行動に意味を求めてしまうからいけないんだと思う。

それらがどんな利益をもたらすのか、それを深く考えることはほとんどなかった。

考える必要がなかったから。


俺は、それらを無駄なものであると認識していた。







「俺達、付き合ってるんだよな?」

「でも乾は、あたしのこと’そういう好き’じゃないんだと思うんだよね」


そういう好き、・・・ってどういう好きなんだ?そう聞くと、は困った顔をした。

つまり・・・とが口を開く。


「乾のあたしに対する感情は 恋じゃないんじゃないかな」


なるほど、俺は呟いた。

納得したわけじゃなかった。俺はこの感情を恋だと確信していたから。





冷たい風が吹く、学校帰りのいつもの道。





「俺は、が好きだ。」

「うん。」

「それじゃ駄目なのか?」

「・・うん。」



俺は じゃあどうしろって言うんだ、と言った。

は小さくため息をつき、わかんない、と言った。



「面倒だな、恋って。」

「そうだね。」


呟き合う俺達に、また冷たい風が吹く。


「別れるか?」


淡々と言う。


「それは嫌。」


淡々と返す。


「だよな。」


どうしたらいいんだろう、が言う。


「あたしはね、乾が好きだよ。大好き。」

「俺もが好きだ。」


でもそれは、とまたが口を開く


「・・それは、恋じゃないんだよ。」

「振り出しに戻ったな。」



じゃあどういったものが恋なんだ、を見て言うと、はまた困った顔をして言った。



「・・・乾、2年の頃さ。先輩と付き合ってたじゃん。」

「ああ。」

「あんときは、先輩の浮気で別れたけど」

「そうだったな。」

「でもあれは恋だったよね。今のあたしへの感情とは、違った。」

「違いが分からない。」




だからっ、そう言うの口調はさっきよりもすこし荒くなっていた。




「乾、いっつも先輩の事見てた。」

「憧れてたから。」

「先輩と付き合いはじめたとき、本当に嬉しそうだった。」

「まぁたしかに事実だな。」



それらを、俺が認めれば認めるほどの口調は荒々しくなった。

どうせ否定しても怒るのだろうが。



「俺にどうして欲しいんだ。」

「・・・どうして欲しいってわけじゃない。」

「冷静になれ。何か不満があるのか?」

「ないけど・・・・・」




「でも、あたし今の状況なんか嫌だ。」






冷たい 強い風が 吹いた。





もう秋も終るな。







「あたしは乾のこと好きなんだけどさ、」


「でも乾ってなんていうかこう」



あたしより冷静だからさ



そう言ってそっと髪をかきあげる

その口調も充分冷静だぞ、そう言うとは少し微笑んだ。



「はっきり言うとね」

「ああ。」



「愛情表現が。」



・・・・愛情表現?



「そう。愛情表現。」

「・・・なるほど。」








なんで俺はすぐ気付かなかったのか。


は  冷静じゃなかった。


だんだんは、今にも泣き出しそうだったのがわかった。

微笑んでいるのは涙をこらえるため。



俺はこいつにこんな顔をしてほしいわけじゃない・・・・・・けど





こんなことを言ったらに殺されるな






そんな表情をする彼女がなんだか少しめずらしくて、





俺はこんなにも愛しいんだ

















「・・・・・・・・・・い、ぬ・・・い?」

「・・・・俺なりの愛情表現」
















キスの意味を知った


今まで無駄なものだと思っていたのに











の体温が


俺の体温が



の想いが


俺の想いが






重なって










愛情表現の大切さ。







「大好きだ・・・よりも、愛してるの方が伝わるか?」

「・・・・・・・・・ばか。」










































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