ヴーー・・・ヴーー・・・


使用頻度の高い携帯のバイブが鳴るのは珍しくなんてない

俺が驚いたのは 珍しいあいつからのメールだったから






    僕 ら は 世 界 の 片 隅 で







「・・・んなとこに居ると落ちるぞ」


息が少し乱れてる

家から学校までは歩いて5分。メールを受けて すぐ走って 3分。真夜中の学校。

はプールサイドに座り、水を触って遊んでいた



「早かったじゃん、宍戸」


プールサイドに座ったまま、水で遊んだまま、は俺を見ずに言った

暗くての顔は見えない 不安だった。



「まあ  な」



深夜の学校は嫌に静かで 俺たちの声と小さな風の音だけが聞こえた。

自分の声が変に響くような気がして 喉の奥がなんとなく詰まった。



「ね 見て」

「は?」



が人差し指を上に向ける。俺はつられて空を見上げた

星も月も見えなかった 雲が空を覆ってる



「あれね あたしの今の心情と 同じ」




がやっと顔を上げて 街頭に照らされた顔が見えた

そして同時に俺は  やっぱり と心の中で呟いた。

頬は涙で濡れて 口角は少し上がっていたけれどどちらかというとその笑みは苦笑いに近かった。


これが予想していた通りだから 俺は今すごく悔しいんだ。




「跡部にふられた」




言わなくていいって そんなん。

どうせ言ってもお前がつらくなるだけなんだろ。なあ、




「悪い、って  らしくない顔してさ   何回も謝るんだよ  あの跡部が」




跡部が。もう景吾とは呼んでいない。


好きなヤツが彼氏と別れたことを 悲しむべきか。苦しむべきか。喜ぶべきか。



「そろそろ終わりかなって、ちょっと気付いてたからさ、最初はあんまりびっくりしなかったんだ、けど」

「だんだん・・・だんだん苦しくなって、きて・・・そんで・・・」

「・・・もういいから 喋るな」


は唇を噛んで下を向いた。の涙がぽたっと地面を濡らした。



、」

「     でも私跡部のことが好きだから」

「・・・」

「私が 好き なのは跡部だけだよ」




言い聞かせるかのように はそう言った。

わかってるから、俺は何も求めないから、俺はさっきがしたのと同じように 苦笑いした。

ごめん、は小さく言った。の肩の震えがひどくなった。



俺はに告白してないけど きっと数年間一緒にいるうちに気付かれたんだと思う。

俺も器用な男じゃないし、最近は下手に隠そうとすることもやめた。



「こんな時間に呼びだしてごめ  ね」

「別に平気」

「誰かに  話さなきゃ無理 で・・・」



その誰かが俺で嬉しい、俺は素直な気持ちを言いかけてやめた。またを苦しませることになりそうだったから。



 泣くな」

「 ごめん ね、宍戸」

「なんでが謝るんだよ」

「・・・・・っ」



そっと包みこんだら は俺の胸でまた強く泣いた

俺は片手を震えるの背中に回したまま、そっと空を見上げた



月はまだ 雲に隠れて見えないけど


俺達を照らす街頭だけがまぶしくみえた。



跡部のような輝いた月にはなれなくたっていいけど






俺は今 こいつにとっての街頭に なれているだろうか






















<2005.08.02>
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