「ねえ」

なに、って返ってくる声が聞きたかった
それだけなんだけど。

なんでもない

なんて言うと
きみはきっと怒っちゃうだろうから

かわりに すきだよ、なんて言ってみたりして。





ちいさなこえで


「はやと、は。」

「あ?」

「あたしのこと好き?」

何言って、
なんて言いながら、あたしをぎゅっとして頭を撫でる。

「しらねー」

乱暴にはいた言葉とは反対に
あたしをやさしく撫でるあなたの手。

はやとがそういうこと言わない人なのは知ってるけど
たまに言ってほしくなる甘い言葉。

「言わなきゃわかんないよ」


言って、撫でる手を掴んで目を見て言うと
はやとは少し困ったような顔をして


「……」


小さく間が空けて




はやとは言葉のかわりにキスしてくれた。
結局何も言ってくれなかったけど
いつもより優しいキスに、まあいっか、なんて思ったり。



はやとの部屋はごちゃごちゃしてて片づいてはいないけど、
それでもなんとなく落ち着く。
こうして2人でいるだけで時間が過ぎる。
狭い部屋だけど、はやとの煙草の匂いがするだけで、すごく居心地がいい。


「今日は帰るね」


別れ際、部屋を出るときに毎日言うこの言葉がきらい。(あなたは私に帰れ≠ネんて言
わないから。)

できるならずっとここにいたいくらいだよ。


そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか
いつもあなたはあっさりと、おう、なんて言って
先まわりしてあたしのためにドアを開けてくれる。


おじゃましました。


ブーツをはいてマフラーを巻きなおしながら
はやとに背を向けて言う。
はやともはやとで、はいよ、なんて言って。

他人行儀ね。この瞬間はきらいよ。

だけどこれが日常。



(結局今日も言ってくれなかったなあ。)



なんて思いながら今日も他人行儀を繰り返してる。


「…やっぱり、」


うでをくいっと掴まれた。


「!」



こんなとき

ますますあなたを好きになる。


「やっぱり、まだいれば」

煙草臭い
あなたの部屋にもいちど飛び込んで

今度は聞かせてね?



ほんの少し
赤ら顔のはやと



(かわいい…)




抱きついたらもう離れたくないよ。



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