「君さ・・・いいかげんにしてくんない?」

「・・・ごめん・・。」



放課後

二人きりの応接室


粉々の花瓶

散らばるガラスの欠片


恭弥の怖い顔。




 笑った顔はかわいかったよ




「いや、マジごめん・・・!わざとじゃないんですよ」

「わざとだったら殺してる」

「手がすべった・・・」

「どうでもいいけど。早くほうき持って来てよ。」

「はーい・・・」


そうじ用具のほこり臭いロッカーをあけて、ほうきを二本取り出した。

そしてすぐ一本片付けた。2本持ってたってどうせ恭弥がそうじするとは思えないしね。


「あーあ、高そうな花瓶割っちゃったな・・」


言いながらほうきで掃く。

恭弥はいつものように黒い革張りのソファに腰を下ろした。


「はあ・・・君ってほんと、つくづくバカだよね。」

「すいませんねえバカで。」

「ホントに。」

「・・・ムカつく!」

「なんか言った?」

「いえ なにも」


言いながら、ほうきを動かす。

恭弥の言い方はムカつくけど、あたしはそれほど腹立ってたわけじゃない。


「・・・もう夕方だなー」


ほうきを動かす手を止め、私は窓に映る夕焼けに目をやった。

空はうっすらオレンジ色に染まっていて、部活が終って帰る生徒達の姿があった。

ふと、校門から少し離れたグラウンドの方にあった人影が目に止まる。


「・・・・ん・・?  あ ね、ねえちょっと恭弥!喧嘩してる、喧嘩!」

「うるさいな どうでもいいから手を動かせよ」

「や、でも一年と三年だよ!?止めたほうがいいんじゃ・・」

「・・・・1年?」


思いあたるふしがあるのか、1年という言葉に小さく反応した恭弥。


「野球部の山本君と、あと獄寺くんと・・・さ・・沢・・本・・・?くん?」

「沢田ね。」


気付いたらソファに座っていたはずの恭弥も一緒に窓の前に立っていた。


「ま どうでもいいよ。好きにさせとけば。」

「でも・・・相手は3年だし・・いくらなんでも・・・」

「関係ない。」

「・・・風紀委員長のくせに・・・」


私は少しあきれながら言って、恭弥からもう一度窓に視線を移した。


「・・・まあいっか。きっと大丈夫だよね。」

「結構あっさり放っとくんだ。」

「っていうかあそこにいる獄寺くんって前にも三年と喧嘩して従えたことあるみたいな話聞いたし・・・。

ま、いーや・・・山本君には今度よく言っておこ。」


喧嘩はよくないよーってねー、言いながらまたほうきを動かした。


「・・・なに、知り合い?」

「んー?まあ、一応野球部のマネージャーだしね。」

「ああ。そう。」

「良い子だよー、頑張ってるし。」

「・・へえ、仲良いんだ」

「あはは、まあねー」

「ふうん」


そう言って、また窓を見る恭弥。

肘を付いて、つまらなそうに 恭弥の言う「群がる草食動物」を静かに眺めていた。


「・・・山本 か」

「なに?」

「別に。・・・むかつくなあ、と思って。」

「・・・? なんで恭弥がむかつくのよ」

「・・・・・鈍感。」

「?」

「・・なんでもない。」


雲雀はあきれた様な口調で言った。





「・・・箒、貸して。」

「え?」

「君片付けんの遅いから。」

「は?」

「また花瓶壊されたらたまんないから、君はおとなしくしててくれる?」

「え、え、えー・・・!もしや恭弥がやってくれる、の?」

「お と な し く し て て く れ る ?」

「は はい・・・」



散らばる破片を集める恭弥。

そして静かになった応接室の沈黙を破るかのように、放送が鳴った。



  “ ピンポンパンポーン・・・・ ♪
   下校時刻になりました。まだ校内に残っている生徒は、すみやかに下校しましょう… ”




「あ、どうしよう、もうこんな時間・・・・」

「ほんとだ」

「あたし、教室に荷物置いてきちゃったからとってくる」

「うん。・・・・あ、


・・帰り送ってあげるからちゃんとここ戻ってきなよ」



「・・・・?  わかった。ありがと・・?」


なんで恭弥が今日こんなに優しいのか、私はその日の帰り道まで分からなかった。



「・・・・・・・・・ほんとに鈍感なんだから。」

「ん?なんか言った?」

「なんでもない、早く鞄取ってきなよ。」

「・・・んー、わかったー・・?」






「                     」





応接室のドアを開ける瞬間、後ろの方で雲雀がなにか言ったけど、

校庭から響いた爆発音にかき消された。




私は振り向いて「何か言ったの」と聞いたけど、やっぱり彼は教えてくれなかった。







 ----------------------------「まあ、のそういうところが好きなんだけど。








<2005/12/31>








(最後の爆発音はスモーキンボムです)
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